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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)351号 決定

抗告人 有限会社タチバナ興業

右代表者取締役 榎本靖夫

主文

原決定を取消す。

理由

抗告人の抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状及び抗告理由書記載のとおりである。

本件記録によると、本件任意競売の申立債権者である日動火災海上保険株式会社の第一順位の抵当権は昭和五二年一二月九日設定登記されたものであるところ、抗告人主張の賃借権は、その後の昭和五四年四月二一日本件の一括競売物件中の建物について賃借人李石宝のために存続期間三年と定めて設定された短期賃借権であって、債権者の本件任意競売申立前である右同日にその旨の登記がされたものであるから、右短期賃借権がその後消滅したことを窺うに足りる資料のない本件においては、右の短期賃借権をもって右抵当権者、したがってその抵当権実行による競落人である抗告人に対抗できることは明らかである。そうすると、抗告人主張の短期賃借権は民事訴訟法六五八条によりその賃貸借関係を公告に掲記すべきものに当たると解すべきところ、原裁判所が本件競売期日の公告にその賃貸借関係を掲記しなかったことは本件記録上明らかであるから、これを看過してした本件競落許可決定は違法たるを免れない。

よって、抗告人の本件抗告は理由があるから、原決定を取消すべく、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 渡辺忠之 裁判官 鈴木重信 渡辺剛男)

〈以下省略〉

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